地域創生プラットフォーム「SDGsにいがた」は、「新型ウイルス対策WEBフォーラム」を開設しました。会員企業・団体の皆さまの不安、疑問、取り組み、要望、希望を集め、発信します。地域経済・地域社会を脅かす新型ウイルスに対してどのように考え、行動すれば、SDGsの理念に合った経済、社会、環境のよりよい好循環が生まれるかを探ります。
第2回は、厚生連新潟医療センター(新潟市西区)の吉澤弘久病院長にインタビューしました。呼吸器内科が専門で、2013年度まで勤務されていた新潟大学医歯学総合病院では、肺がんを中心とするグローバル治験、臨床試験も推進するなど、新薬開発にも詳しく、グローバルな視点から地域医療の観点までお話しいただけました。
何より重症者、死者を出さない方策を
厚生連新潟医療センター(新潟市西区)吉澤弘久病院長に聞く
―病院では普段から感染症対策を徹底されていると思いますが、新型コロナウイルスが出現したことによって強化している対策を教えてください。
「来院された方に対し、発熱や咳(せき)などの症状がある人を受付でスクリーニング(選別)しています。ただ、感染していてもほとんど症状がない人もいます。そのため原則として面会はご遠慮いただいています。軽症や無症状では感染しているかどうか分かりませんから、院内への人の流入を最小限に抑えるようにしています。誰もが感染しているという前提で対応するしかありません。面会許可は重症の患者さんが入院されている場合のみとし、面会人数を絞ってほしいとお願いしています」
「こうした事態は初めてです。私も怖いと感じていますし、病院のスタッフもみんないつ自分が感染するか、院内感染が起きないかと心配しています。一番の対策として手洗い、マスクなどのスタンダードプリコーション(標準予防策)を徹底しています」
―軽症、無症状の人が多い一方、世界中で多くの方が亡くなっています。季節性インフルエンザでも多くの方が亡くなっていますが、その致死率は平均0・1%くらいとされ、新型コロナウイルスはかなり高いといわれています。
「致死率は0.7〜2%くらいあるといわれています。中国・武漢やイタリアなどはもっと高くなっていますが、あれは医療崩壊が起きたためにケアができず、救える人を救えなかったからだと思います」
「何よりも重症者、死者を出さない方策を考えないといけません。そのためには医療崩壊をおこさないことが大切です。医療体制が整わないままで、無症状の人にもむやみにPCR検査をやることになったら、医療機関に人があふれ、救える患者を救えなくなる恐れがあります」
「新型コロナウイルスによる肺炎はCTやレントゲンを撮ると、一般の肺炎と鑑別が困難な影であることも多い一方、重症例ではびまん性の(一面に広がったような)影に進展しています。酸素飽和度(酸素と結合しているヘモグロビンの割合)の低下も見られます。それらは他の病気でも見られますが、新型コロナウイルスに感染している恐れがありますので個室管理を徹底し、PCR検査を受けてもらいます」
薬、ワクチンができるまで、小さな山で乗り切るよう意識すること
―新潟県内では何か症状がある人や感染者の濃厚接触者らにPCR検査をした結果、4月10日までに1608件の検査に対し、陽性反応は41件でした。こうした状況や今後の行方をどのようにみていますか。
「東京ではもっと高い割合で陽性反応が出ていますが、県内はまだ感染者が多くないとみています。ただ、クラスター(感染者集団)を追い切れない孤発例も散見され、東京など感染者が多い地域との交流を完全には止められませんから、今後の増加は避けられないと思います。政府の緊急事態宣言はある程度の効果があると思いますが、ウイルスを完全に封じ込めるのは困難です。東京では、例えばJR山手線を多くの人が利用しています。感染拡大の恐れは引き続きありますから、注意喚起を続けていかないといけません」
「県内の医療機関では今、最悪の状況を想定して対応を検討しています。新潟医療センターでも患者を受け入れられるよう準備しています。4月下旬から5月中旬ころまで突発的に増える恐れがあるとみています。このときに感染拡大を防ぎ、小さな山で乗り切れば、感染者数は下がっていくと思います。ただ、いったん収まっても社会の緊張度が下がって、再び感染が拡大する恐れもあります。薬やワクチンができるまで、とにかく小さな山で乗り切るように意識することが必要です」
―世界は新薬の開発を待てないほど逼迫(ひっぱく)した状況だと思います。アビガン(抗インフルエンザウイルス薬)、レムデシビル(抗エボラウイルス薬)、カレトラ(抗エイズウイルス薬)、イベルメクチン(寄生虫感染症薬)、オルベスコ(吸入ステロイド薬)など、既存の薬に期待してもいいですか。
「アビガンがどのくらい効果があるのか、注目しています。どのような使い方をすれば、最大の効果を出せるか、各国が協力し合って治験を進め、安全性も確認できれば、通常よりも早く汎用化できるようになるかもしれません。ただ、アビガンには催奇形性の副作用があり、妊娠中の女性には赤ちゃんに影響がありますので使えません。薬は数百例、ワクチンはさらに大規模な治験が必要で、安全性も十分に確認する必要がありますが、アメリカでは効果があると分かれば、早くに承認されるかもしれません」
―あらためて感染拡大の推移と現状をみて、新型コロナウイルスの特性をどのように捉えていますか。
「症状の多様さが挙げられます。無症状や軽症の人が多いのですが、重症化すると、あっという間に死に至る人もいます。他の多くのウイルスは感染しても免疫力によって2週間くらいでウイルスは感染力が無いレベルまで減少してしまいますが、新型コロナウイルスは3週〜1カ月もウイルスが存在し続けて感染を広げる恐れがあるという報告もあります。無症状であればある程度は増殖を抑えているとみられますが、この無症状や軽症の人が多いために感染を広げているとも言えます」
「北海道では2月末に知事がいち早く独自の緊急事態宣言を出し、道民に外出自粛を要請したことで、いったんは感染者数が減少しました。ウイルスを封じ込めるためには、他人からもらわない、他人にうつさないという社会をつくることが何よりも効果的です」
(取材:SDGsにいがた事務局)
※このインタビューは2020年4月9日に行いました。
※PCR検査数と陽性反応数は4月10日現在の数字です。
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