持続可能な開発目標「SDGs」への理解を深める「にいがたSDGsフォーラム2020」(新潟日報社主催)が2020年2月18日、新潟市中央区の新潟日報メディアシップで開かれました。元国連職員によるSDGsの基礎講座から、新潟県内の自治体や企業、学校などによる取り組み紹介を通じ、参加した約230人は個人や所属する組織で取り組む意義やノウハウを学びました。また4月から発足する新潟県内の推進組織「地域創生プラットフォーム SDGsにいがた」の入会呼びかけも行われました。(文責・SDGsにいがた事務局)
SDGsへの取り組みは、企業にとってはビジネスチャンスを生み、地域にとっては活性化につながる可能性が期待されています。
基調講演は、一般社団法人SDGsアントレプレナーズ(東京)の青柳仁士代表理事が「SDGsの基本と始め方」をレクチャーしました。青柳さんは2016年から国連開発計画(UNDP)駐日事務所の広報官として国内各方面への初期のSDGs普及に努め、社団法人を設立した現在もSDGsビジネスの創出と実行に取り組んでいます。
SDGsの本質は「今の世界は持続不可能だ」と認めたこと
青柳さんはまず、SDGsの基本と本質について説明しました。
「持続可能とは『境界線を越えない』という意味。森林の場合、ある一線以上、木を切ってしまうと生態系が破壊され、同じ量の植物を植えても元には戻りません。経済も政治も外交も同じで一線、あるいは境界線というものが存在します」
「すなわち、SDGsとは『この境界線を越えないで、人類が進歩し続けるための目標』ということです。要するに『今のこの世界は持続不可能だ』と言っているんですね」
そして、国連において193カ国もが合意したことは、人類史上初めてと強調します。
続いて、多くの企業がSDGsに取り組むようになった背景について4点の変化を挙げました。
(1)顧客と競合の変化
これまでは品質とコストさえよければ取引先に選んでもらえたものが「社会価値や、SDGsというものがないと、競合に負けてしまうという状況になってきました」といいます。
(2)株主と投資家の変化
企業の価値基準が、売り上げや収益力、成長だけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資のように「非財務的価値の部分、社会に対してどれだけ良い影響を与えているのか」を重視する仕組みが急速に進んでいます。
(3)社員と外部人材の変化
若い世代を中心に、企業を選ぶ基準として「自分の信じている、正しいことをしっかりやってくれる会社だから」などの理由を重視する若い世代がどんどん増えています。そのため優秀な人材確保のためにも企業としてSDGsに取り組むことが重要だといいます。
(4)政府や規制当局の変化
各国ともSDGsへの取り組みを強め、規制を受ける企業にとっては「やらなくてはならないこと、といえるほど、市場環境が変化しています」。
一方、損得だけでなく、飢餓や地球温暖化など持続不可能に思える世界を目の当たりにして「人として自分のできることをやらなきゃいけないんじゃないか、という気持ちを世界中の人が持っている」ことがポイントとも指摘します。
その結果、SDGsへの「共感」が広がり、商品やサービスを選ぶ重要な要素にもなっています。
“SDGsウオッシュ”に陥らないために
さて、企業がSDGsに取り組むときにどんなことに注意すればいいのでしょうか。青柳さんは「外によく見せようということだけを目的にする企業が結構ある」と指摘します。
こういった行動は「SDGsウオッシュ」と言われています。SDGsでうわべをごまかす(whitewash)という意味の言葉だそうです。
まじめに取り組む企業とSDGsウオッシュ企業の見分け方について、青柳さんは2点挙げます。
「一つは、本業で取り組んでいるかどうか。二つ目は社会と自社の慣行軌道を変えているか。これから取り組む方々は、この点を注意してください」
青柳さんは最後に、「あなたにもできる17のミニゴール」という図を示しました。SDGsの17のゴールを身近な行動に置き換えたもので、例えば「残さず食べよう」「スイッチをこまめに消そう」「環境・省エネ性能を重視して買おう」など、すぐにできるものばかり。
「あまり難しいことを考えずに、まずはやってみることが非常に重要です。企業であれば、まずは担当者から始める、個人であればまずは自分から始めてみる」と、一人一人の行動を呼びかけました。