菓子メーカーのカルビーは、新潟県の粟島で「持続可能な農業モデル」の一環として、特産の大豆「一人娘」を使用したスナック菓子「miino(ミーノ)」の商品化を進めています。粟島の高齢化と後継者不足に直面しているため、生産支援や島のファンづくりにも取り組んでいます。島の生産者と共に一人娘を栽培し、その過程を体験コンテンツとして提供する取り組みも行っています。
4年目となる2024年は6月7~9日に播種(はしゅ=種まき)ツアー、7月5~7日に草取りツアーを開催しました。草取りツアーの様子をリポートします。(事務局・星)
一粒の出合いが人のつながりを生み
カルビーの取り組みは2023年の「第3回新潟SDGsアワード」を受賞。全国的にも評価を受け、同年に日本の広告業界では最大級の賞である「第63回ACC TOKYO CREATIVE AWARDS」においてデザイン部門入賞、さらに内閣府の「地方創生SDGs 官民連携優良事例」に認定されました。初日のオリエンテーションでプロジェクトのリーダーを務める藤東(ふじとう)亮輔さん(カルビーマーケティング本部ブランド戦略室ストラテジーチーム課長)は「たった一粒の出合いがここまで大きくなり涙が出るほどうれしい。みなさんと一緒に紡いでいきたい」とあいさつしました。
2泊3日となる7月の草取りツアー参加者はカルビーなどの関係者も含め28人。草取りは2日目の午前中、島の人々約20人と一緒に行いました。
畑の面積は、当初の約30アールから昨年は72アールまで広がり、今年は130アールまで大きくなりました。大豆の収穫量が増えることで加工コストも下がり、「miino一人娘」の値段も初年度の1500円(30グラム)から500円(27グラム)へと劇的に下がり、ECサイトなどでの限定販売から、スーパーなどでの一般販売への道が開けてきました。
梅雨空が一転、暑さの中で
ただ、作業面積が大きくなることで、草取りも大変。雨予報から好天に転じたのはありがたかったのですが、夏の直射日光が容赦なく照りつけ、40~50分ごとに休憩を挟んでいきます。たださすが離島。日陰に入れば海風が心地よく、太平洋側の40度前後の酷暑と違った昔ながらの夏、といった体感です。
6月の播種ツアーの後、若い芽や株を食べるガの幼虫「ネキリムシ」により10%ほどに被害が発生。島民により種をまき直したとか。草取り中にも根元を掘り返すと、にっくきネキリムシがいました!
また手強いのが「イタドリ」という雑草。地上から出ている部分を摘んでも深く張り巡らされた地下茎を通じてまた出てくるそうで、根こそぎ取るのは容易ではありません。
午前8時から作業を始め約3時間。畑2面がようやくきれいになりました。
手作り料理で島の”ばあば”と交流
2泊3日のツアーでは農作業だけではなく、さまざまなアトラクションが用意されています。初日は一人娘で作った味噌とタマネギを甘く炒める「油みそ作り」、2日目の夜は島の“ばあば”の手料理を食べながら島民やカルビー社員と交流する「ばあばキッチン」も行われました。
ツアー参加者はカルビー製品のファンが多く、新潟県内はもとより岩手、千葉、大阪、兵庫、滋賀など全国から集まりました。交通費・宿泊費は自己負担にもかかわらず抽選になるほどの人気ぶり。毎回参加するリピーターもいます。「自腹参加で最初は何の罰ゲームかと思った」と冗談交じりに語った大阪府の女性は、自然の中で体を動かし、素朴な島の人々との交流に「“最高の罰ゲーム”でした」と満面の笑みを浮かべました。
「農作業を通じて一人娘の魅力、なぜこの豆がこんなにおいしいのか。そしてどれだけ手がかかっているのかを体感していただく。それにより一人娘を使ったmiinoの付加価値を高めていく。付加価値がどんどん付いていくことによって、少し高い値段でも納得して買っていただけるんじゃないかと考えています」と藤東さん。同時に粟島の魅力を広げることにつなげて、関係人口を増やしていくことで島の持続可能性を高めることを視野に入れています。
2024年を締めくくる収穫ツアーは11月15日(金)~17日(日)に開催の予定。カルビーの「粟島一人娘PROJECT」ホームページ( https://www.calbee.co.jp/hitorimusume/ ) を通じて募集されます。