SDGsにいがたの2025年度第4回セミナーが9月18日にオンラインで行われました。今回は「2025年のSDGs~10年目の今取り組むべきこと~」をテーマに、東邦産業株式会社の代表取締役社長で、一般社団法人サスティナブルにいがた共同代表理事の五十嵐悠介さんのお話を聞きました。五十嵐さんは県内大学生500人へのアンケート結果などを基に「若者の9割が企業のSDGsへの取り組みを評価しており、取り組んでいる県内企業の認知度も2021年に比べ3倍くらいに増えている。社会の一員として、地域の一員として、企業の活動の中で、この社会をどうやって持続可能にしていくかを今の20代である大学生や短大生はしっかりと見ている」と分析。「本当に皆さんがなりたい企業は何か。そこを定めた上で、持続可能に至るための方策を定めていく。それが企業にとってのSDGSの戦略」と話しました。

五十嵐悠介さん
東邦産業株式会社の五十嵐悠介社長によるSDGsセミナー「2025年のSDGs~10年目の今取り組むべきこと~」の要約は以下の通りです。(新潟日報生成AI研究所のサービスを利用しました)
SDGsの誤解と本質 — 企業が果たすべき役割
まず簡単に自己紹介します。2011年に新潟に戻り東邦産業に入社、2020年から代表取締役社長を務めています。2021年には一般社団法人サスティナブル新潟を立ち上げ、大学生や企業向けにSDGsの普及活動を続けています。給付型奨学金や生活支援の取り組みも行い、新潟をより良くしたいという思いで活動しています。
さて本題のSDGsについてです。皆さんも聞いたことはあると思いますが、実際に「SDGsとは何か」と問われると答えられる人は少ない。SDGsをボランティアや単なるエコ活動と混同する人も多いです。ボランティアは素晴らしいが継続性が担保されにくい。一方でソーシャルビジネスは市場の放置されてきた課題にビジネスで取り組む試みです。SDGsを「エコバッグを買うだけの自己満足」と誤解して批判する向きもありますが、本質は違います。
SDGsは“Sustainable Development Goals”、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」です。MDGs(ミレニアム開発目標)の反省を踏まえ、政府だけでなく民間を巻き込んで達成を目指す仕組みになっています。17のゴールは「放置すると持続不能になる社会課題」を示しており、これを解決すれば地球や社会は持続可能になります。だからこそ企業や自治体、市民が協力して取り組む必要があります。
変わる若者の価値観
若い世代の価値観も変わってきています。私たちの団体が行った新潟県内の大学生アンケートでは、ほとんどの学生が「企業や自治体はSDGsを通じて社会課題に取り組むべきだ」と答えています。また、学生は企業選びで社会貢献度やSDGsへの取り組みを重視しており、単に「やっている」という表明だけでは評価されません。実行が伴わないウォッシュ(SDGsウォッシュ)には強い反感があり、「やれないなら言うな」という声も多いです。つまり、企業は何を、どのように行っているかをきちんと説明できる必要があります。
学生アンケートの別の結果では、若者が企業に求めるトップは「給与を都市部並みに上げること」、次いで「託児所や柔軟な勤務制度など育児しやすい環境」、三番目が「男性の育児参加促進」でした。給与や働きやすさ、ワークライフバランスは若者の就職・Uターンの重要要素になっています。企業はこうした期待を踏まえ、自社を再定義する必要があります。
目標設定と地域での協働を
では、なぜSDGsに取り組むべきか。私はSDGsを「人間ドック」に例えています。人間ドックで複数の検査で異常が出れば生活習慣を変えるように、17のゴールは「このままでは持続できないよ」という警告です。放置すれば次世代が不利益を被る。気候変動や資源枯渇、格差といった課題は、誰か他人任せにしてよい問題ではありません。企業も「自社の持続可能性」を考える必要があり、それは単に利益追求だけではない。経済・社会・環境のバランスをとること、すなわちESG(環境・社会・ガバナンス)の視点が求められます。
過去の公害や労働慣行の変化を振り返ると、社会の「当たり前」は変わってきました。かつて許容されていたことが今では許されない。だから企業も時代とともに対応を変えていかなければなりません。SDGsに取り組むことは制約を増やすことであり、その過程ではトレードオフも生じます。だが制約を受け入れ、工夫して両立を図ることが持続可能性への道です。誰かに押し付けるのではなく「みんなで一緒に勝ちに行こう」という姿勢が重要です。
具体的に企業が始める第一歩は、自社がどんな企業になりたいかを明確にすることです。その上で持続可能になるために解決すべき課題を特定し、目標を定め、日々の行動に落とし込んでいく。これはダイエットや健康改善と同じプロセスです。曖昧なまま目標だけ掲げても意味がない。自社のありたい姿を描き、それを実現する指標としてSDGsを活用するのが正しい使い方です。
今はSDGsが始まって10年、2030年のゴール年まで時間が限られています。多くの指標で十分な進捗が見られないのが現実で、取り組めない企業は将来的に淘汰されるリスクがあります。医者に高血圧を指摘されているのに放置すれば将来大きな代償を払うように、私たちも「今」行動する責任があります。SDGsは「誰一人取り残さない」という理念です。地域の企業として、自社だけでなく地域全体の未来を描き、仲間と協力して持続可能な社会を作っていきましょう。
まとめます。SDGsは単なる流行語やバッジではなく、自社の存続と地域・地球の未来をつなぐ指標です。目標を明確にし、行動習慣を改め、社員とともに日々積み重ねること。そうした企業だけが次の世代にも信頼され選ばれる存在になります。私たち新潟の企業も、それぞれの立場でSDGsを自分ごとにして取り組んでいきましょう。