「心リハ」人材育成へCF
優秀賞・社会部門 新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科学（新潟市中央区）
さまざまな職種の医療従事者でつくる新潟大学大学院医歯学総合研究科内科学のチーム
表彰を受ける新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科学
新潟大学大学院医歯学総合研究科の循環器内科学（新潟市中央区）は、新潟県内の循環器病診療体勢の充実に向け、クラウドファンディング（ＣＦ）を通じて資金を集め、チーム医療に携わる人材育成を進めている。ＳＤＧｓの目標のひとつ「すべての人に健康と福祉を」の達成を目指している。
新潟県は最新の医師偏在指標（医師がどれだけ充足しているかを表す指標）で全国最下位となり、深刻な医師不足に陥っている。さらに急性心筋梗塞をはじめ心臓、血管に関する治療を行う循環器病の専門医師が少なく、人口当たりに占める循環器内科医師数は、全国最低レベル。
そこで新大の循環器内科学では医師以外の医療従事者にも加わってもらい、心臓や血管の病気の再発を予防する取り組み「心臓リハビリテーション（心リハ）」を展開。多様な医療従事者と連携することで、自身の得意分野を生かしながら「心リハ」を広げていきたいという思いがある。
学習を支えるための研修費や教材費、学会入会費などが必要だが、公的補助制度はない。金銭的な理由で「心リハ」を学ぶ機会を失わせたくないという思いから、ＣＦで約７００万円募り、奨励金としてこれまでに県内の四十数人に配布した。
新潟大学大学院医歯学総合研究科の循環器内科学の藤木伸也医師は「『心リハ』の活動を広げ、県内の循環器医療を支えることは、地方でも住み続けられるまちづくりにつながる」と話していた。
街に彩りを 障害者アート
優秀賞・社会部門 バウハウス（新潟市中央区）
まちなかをアートで飾ろうと、セコム上信越と連携し、障害者が描いた作品を設置したバスの待合所＝新潟市中央区新光町１
表彰を受けるバウハウス
障害者が手がけたアート作品のレンタル事業などに取り組むビル清掃会社「バウハウス」（新潟市中央区）が社会部門の優秀賞に輝いた。「新潟の持続可能な共生社会づくり」をテーマに掲げ、事業を展開している。
障害者が描いたアート作品のレンタル事業を通じて、障害者の自立につなげている。せっかく描いた作品を福祉作業所内にとどまらせることなく「まちなか」に飾ることを発案。参加企業を募り１７２社に３３１作品をレンタル。売り上げのうち６９５万円を障害者に２０２２年末までに支給し働く場をつくった。新潟県内外のハンバーガーチェーン店のほか、新潟駅ビル内やバス待合所にも展示。スーパー大手の原信では「まちごと美術館」として作品を紹介した。
障害者に短時間就労の機会を設けるため企業と福祉作業所を結ぶマッチング事業も展開した。２０１６年から、これまでに１億２３１２万円を売り上げ、８０５７万円を障害者に支給。人手不足の企業から受注し、その仕事の力量にあった障害者と支援員を派遣。県内の多くの企業とも提携し、サッカーＪ１アルビレックス新潟のホームゲームでもごみの回収プロジェクトを実施した。
ほかにも自然や水辺を生かす持続可能な公共空間利活用事業も展開している。
バウハウスの肥田野正明社長（５４）は「一人では何もできないが、パートナーシップを結べばいろいろな可能性やイノベーションが起きる。そんな輪を広げたい」と今後の抱負を述べていた。
われら「都市鉱山発掘隊」
優秀賞・環境部門 日本基板ネットワーク（新潟市西蒲区）
リサイクルのため、パソコンを丁寧に解体する作業
表彰を受ける日本基板ネットワーク
全国の障害者就労支援施設でつくる「日本基板ネットワーク」（事務局・新潟市西蒲区）は使用済みパソコンなどの小型家電を企業や自治体などから回収し、手作業で解体する事業を展開。レアメタルを取り出し、再資源化する取り組みを行っている。
小型家電に含まれるレアメタルは「都市鉱山」とも呼ばれる。廃棄家電を解体分別することでごみを減らし、環境負荷が軽減できるほか、国内での適正な再資源化で希少な金属の海外流出を防ぐ効果も期待できるという。
取り組みは新潟市内の障害者支援施設で始まり、新潟県内１５施設を含む計１８道府県の５７施設が参加している。これまでに３５万台以上のパソコンを回収。「マイスター」と呼ばれる障害者が作業に当たり、約９割の部品をリサイクルに回している。
情報漏えいを防ぐため、記憶媒体装置を持ち出さずに物理破壊する出張解体サービスにも取り組んでいる。
同ネットワークによると、全国の障害者就労支援施設（B型）の作業工賃が月平均で約１万６千円にとどまる中、月５万円を支給できる加盟施設も出るなど障害者の自立支援に大きく貢献。出張解体サービスなどを通じて障害者が社会と接点を持てる機会も育まれているという。
同ネットワークの鈴木暁大事務局次長（３３）は「県内企業や行政、団体、個人の協力でいただいた賞で、本当にありがたい。使用済みのパソコンがあったらぜひ基板ネットワークの施設に連絡してほしい」と話している。
＜インデックス＞
- 未来を紡ぐ知恵と熱意～新潟SDGsアワード2023
- 【アワード2023詳報１】大賞の紹介 「カルビー」（東京）
- 【アワード2023詳報２】食の新潟国際賞財団特別賞の紹介 「新潟商業高校」
- 【アワード2023詳報３】優秀賞の紹介 「新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科学」（新潟市中央区）「バウハウス」（新潟市中央区）「日本基板ネットワーク」（新潟市西蒲区）
- 【アワード2023詳報４】奨励賞の紹介 「アジアクラフトリンク」（新潟市江南区）◇「妙高市SDGs普及啓発実行委員会」（妙高市）◇「栄中央小学校」（三条市）◇「敬和学園大partners」（新発田市）◇「高志中等教育学校SDGs推進委員会」（新潟市中央区）