事例紹介「暮らしを楽しむ、考える KNOWLEDGE LIFEのご紹介」
株式会社ナレッジライフ代表取締役社長 中村勝治氏
ナレッジライフ代表の中村です。新築の会社と、リフォームの会社2社をやっておりまして、両方合わせても70人いないという会社の規模です。このレベルの中小企業でもこんなことに取り組んでいるんだということで、今日は発表させていただきます。
私のなりわいは家づくり、住宅産業です。住宅産業って大手のハウスメーカーさんでもシェアはだいたい3割ぐらいで、残りの7割ぐらいは一人の大工さんや私どものように地域の工務店が家づくりを担っています。
家づくりは、環境破壊の最たるものだと言われてきました。土地を造成して、造っては壊し、造っては壊しという時代がありました。多い時は年間で120何万戸、家を造ってきたわけですが、それが20年もしないうちにまた壊されて、また造っていく。
しかしながら時代は、いいものを造って、きちんと手入れをして、長く大切に使う、そういう時代になってきました。
したがって、私たちも1回造ったら長く住んでいただいて、ちょっと古くなったらリフォームをしていただいて、次の世代まで住んでいただきたい、そういうことも考えて家づくりをやらせていただいています。
私どもの造っている住宅は、「環境と共生」をテーマにしています。住む人に優しい、地域、まちなみにも優しい、そして地球環境にも優しい、そういう家を造っていこうというテーマで、新築もリフォームもやっています。
そのために、つくり方の工夫、設計の工夫、素材の工夫、素材の組み合わせの工夫といったように、工夫をしながら取り組んできました。当社は今年で45周年を迎えます。
さて、私どもは非常に環境破壊をしてきたので、何とか環境貢献したいという思いがあって、自分たちの仕事をどうすればいいのかという時に、そういった分野に非常に詳しいコンサルタントの会社と知り合いスウェーデンへ勉強に行きました。その縁で「ナチュラルステップ」という世界的に環境団体として有名な国際NGOの創設者、カール博士に出会いまして、ああそうか、こういういろいろな環境破壊が起きているんだなってことが分かりました。
国や地域、いろいろな大手の企業もこういった国際NGOから力を借りて、自分たちがどうやったら持続可能性に貢献できるのかということについて、いろいろなアドバイスをもらっている事が分かりました。私たちも今、知恵をいただき指導してもらいながら取り組んでいるところです。
その時に教えてもらったのは、なぜこんな持続可能じゃない世界になったのかということです。世界人口の推移を見ると、産業革命以後、急激に人口が増えてしまって、水の使用量やCO2濃度、肥料の使用量、森林消失量、漁業開発などさまざまな課題が出てきた。
もう地球が一つじゃ駄目ですよと、とても再生していくのが間に合いませんよと。こういう世の中になってはいけないということで、私どもも取り組んできました。
その中で、ナチュラルステップから「持続可能性4原則8項目」を教えてもらいました。内容は「自然の中で地殻から掘り出した物質の濃度が増え続ける活動に加担しない」「自然が物理的な方法で劣化する活動に加担しない」などです。
私どもがスウェーデンに行ったのは確か2013年ですが、その時はまだぼやっとしていたんですけれども、その後2015年にSDGsが出てきて、この4原則8項目に合わせると、こういうつながりになるんだなということを教えてもらいました。自分たちが住宅を造る活動において17のゴールのうち11項目が当てはまることがわかりまして、その11項目についてどうするかということを、今指導を受けているところです。
その時、博士が「漏斗(ろうと)」型の図を例に話してくれたのですが、だんだん時間が経つにつれて、どんどん漏斗の口が閉まっていくと。早くこの漏斗を通り抜けて、反対側へ行かないと、企業として成り立たなくなっていく。だから早くこの漏斗を通り抜けるために「Future-Fit(フューチャー・フィット)=未来適合性」というものを明確にして企業としてやって行くんだという話をいただきました。
例えばストローもいま紙になってきましたね。ちょっと前までプラスチックが当たり前でしたが、もし自分の会社がプラスチックストローだけ作っている会社だったらどうなっただろうか。ある日突然、大手コーヒーチェーンなどから取引をやめましたと言われたら、漏斗にぶつかって越えられなくなる。従って我々も早くその漏斗を越えなきゃいけないということで取り組んでいます。
また、「バックキャスティング経営」(持続可能な未来のビジョンを描き、現状とのギャップを理解し、そのギャップを埋めるための賢明な方法を見つける戦略的なアクションとイノベーション)が大事だと教えてもらいました。当社は30年後の2050年に向けてどうなっているかを会社で決めています。
建築は今申し上げたように非常に環境破壊が多いものですから、国はゼネコンなど大手向けから我々のような地域の工務店向けまで、SDGs導入のためのいろいろな本(ガイドライン)を出しています。
住宅は非常にCO2を出しています。家の中では家電が増えました、ものすごく便利になりましたが、その代わりCO2をたくさん排出したりエネルギーを使ったりするようになっています。そのため国もいい住宅を造りなさいという話になっていくわけですね。
国が示すこれからの住宅のロードマップで、エネルギーを使わない住宅の4段階のランクがあります。その一番下のランクが「改正省エネ基準」で、現在の新しく造られる住宅の半分ぐらいはまだこのランクです。残りの半分がその上の「低炭素認定住宅」に行きますが、その上に「ゼロ・エネルギー住宅」があります。ようするに自分の家で使うエネルギーは太陽光発電などにより自分でつくってくださいということです。その上が究極のエコハウスと国が呼んでいる「LCCM住宅(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅)」です。家を造る時にはいろいろなエネルギーを使います。部品を作るにもエネルギーを使います。住んでいる間にもずっとエネルギーを使っています。最後は解体して廃棄する時に焼却してまたエネルギーを使います、CO2をたくさん出します。そういったライフサイクル全てにおいて排出するCO2の量を、自分の家で「創エネ」し、長い年月をかけてマイナスにしてくれ、償却してくれという住宅が言われています。我々はいま、そこに取り組んでいます。
その時に、SDGsという哲学がやっぱりそこにないと、やっていけないというのが分かりまして、今やっているわけです。
中小企業ですから、そんなに人も物があるわけではありません。社員は自分の仕事をやりながら、どうやったらSDGsができるかということに取り組んでもらっています。
昨日も1日かけてみんな~営業、設計、現場監督といろいろな仕事を持っている社員~が集まって1日会議をして、こうやっていこうと話し合いました。
単にCO2を出さないということだけではなくて、国は医療費を減らしたいので、健康な家もつくれという指導があります。冬は廊下もトイレも物置も含めて家中どこに行っても21度、夏は27度、これが推奨なんですよね。
住まいが健康に与える影響についてのデータがどんどん出てきています。2度暖かい家に住むと、健康寿命は4歳伸びる。こんなデータも出ています。ですから長く住まなくちゃいけない。省エネにしなきゃいけない、家の中のクオリティーは上げないといけない。それをどうやっていくかという課題に取り組んでいます。
できれば、私どもは使うエネルギーを55%減らしたい。そのためにどうするか。暖房、冷房、換気の使用エネルギーを削減することができる技術ができてきました。しかも家中どこにいても暖かい。エアコンだと風が来ますが床面は冷たくなっていますよね、そうではなく床が暖かくて家中どこも温度差がない、こういう空間を提供しなきゃいけない。
CASBEE(建築環境総合性能評価システム)という国が推奨するツールがあります。その住宅はどういう環境レベルかを示す指標ですが、縦軸が環境品質(Q)、横軸が環境負荷(L)で、Qはどれだけクオリティが高いか、快適な空間か。L はどれだけ環境に負荷をかけているかを2軸で評価をしています。そこにいよいよSDGsが入ってきた。CASBEEは星いくつで住宅を評価されましたが、そこにSDGsに基づくリング評価が出てきた。
どう変わったのかといいますと、今までの2軸ではA社、 B社、C社が作った住宅がたまたま同じ評価になったら区別が出来ないですけれど、SDGsにより奥行きとなる第3軸ができた。これにより、より環境に取り組んでいる会社は評価されるようになりました。
社のイメージを上げるとか、ボランティアとかではなくて、SDGsはまさに経営戦略のひとつだと考えて私たちは取り組んでいます。しかも取り組まなければだめな理由は、冒頭に申し上げたように非常に環境破壊が多いんですね。造る、住む、解体するというサイクルが非常に短い、これを伸ばさないといけないし、いい環境をつくっていかないといけない。
しかも我々の業界は非常に多様な人たちと連携しなきゃいけません。昔は大工さんと左官屋さんでできたんですけど、今は1軒の家を造るのにだいたい30業者が入ります。そんな時代になりました。
将来の世代に迷惑をかけないで、現世代の私たちのニーズも満たす取り組み、これがSDGsだと思って取り組んでいます。
(2020/2/18 にいがたSDGsフォーラム2020 新潟市中央区)
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