事例紹介「原信・ナルス取組事例紹介」
原信ナルスオペレーションサービス株式会社 永谷恵理氏
はじめにアクシアル リテイリングの紹介です。スーパーマーケットの原信、ナルス、フレッセイを展開しています。中でも原信、ナルスは新潟県、長野県、富山県に出店しており、現在78店舗です。「だし香る」シリーズを始め、様々な商品を取り揃えて皆様のご来店をお待ちしています。
本日話す内容は4点です。(1)社内へのSDGs導入 (2)SDGsの取組事例 (3)目標達成までの壁 (4)本日お越しの皆様に
(1)社内へのSDGs導入
SDGsという言葉を私自信が初めて見聞きしたのは3年前ぐらいだったと記憶しています。社内にもこの考えを広めようと部内で動き出しましたが、その時点で初めの壁にぶつかりました。当時はSDGsという言葉自体が全く知られていませんでした。また目標の1や2が飢餓や貧困といった言葉であることもあって、社内ではグローバルな企業が取り組むのではないかといった意見や、面倒くさい考えが入ってきたなという、あまり歓迎されていないムードであったことを覚えています。このままだと、他社はどんどんSDGsというものに取り組んでいくのに、自社は立ち遅れてしまうのではないかという危機感があったことを覚えています。
どうやって広めていくべきか答えが出ない時に、非常に目からウロコだったのが「既に取り組みを進めていることをSDGsにひも付ければいい」という定義でした。そうか、SDGsのためだけに何か新しいことに取り組むのではなくて、いまあることをすれば良いのだということがわかり、社内に導入できる自信に繋がったことを覚えています。
では、どの分野からスタートしようかというところを悩みました。社内では、前例がないことをいきなり営業部門にスタートさせるのは厳しいだろうということもあり、まずは自社で長年続いている「環境対応」からスタートすることとしました。
当社の環境活動は、30年前から始めた牛乳パックの店頭回収がスタートです。その当時はそのようなスキームが全くなく、定着させる事に非常に苦労したと聞いています。
その後、2000年に ISO 14001の認証を取得し、20年間運用して改善活動を続けていることが、当社の強みです。
そもそも、 ISO 14001が目指しているものは、持続可能な社会の実現ですし、SDGsについても同じことを目指しているため、両者は連動しやすい状況でした。また、PDCAサイクルを回すということでも共通しているので、考えとしてなじみやすく、取り組みやすさも抜群でした。
早速、従業員教育から始めました。年1回、アルバイト社員も含めて全従業員に環境教育を行っており、そのテキストの中にSDGsの項目を設けて教育を行いました。また社内報においてもSDGsの社内の進捗状況公開などもしました。このように、環境分野については軌道に乗ってきましたので、他の活動についてもSDGsとのひも付けを行いました。
毎年発行している CSR レポートの編集委員会にて、その年どのような活動をしたかを棚卸しするのですが、その棚卸表にSDGsの17の目標のどれと活動がリンクしているのかを明記をして、検討しました。
ただ、17のゴールとひも付けると、メンバー間で「私はこう思う」、「こう思う」という風に意見が分かれてしまうので、必ず169のターゲットから当社の活動をひも付けることでメンバーによる認識の違いをなくしました。
このような形で進めることで、当社においては取り組みのステップ1の SDGsの理解まで進んだところです。来年度からは優先課題を決定する段階に進める予定です。
(2)SDGsの取組事例
では、ここからはISO14001とSDGsとで連動している取り組み内容について報告します。
今、当社で大きな課題として捉えているのは、三つです。
まず食品廃棄物の削減についてです。昨年、恵方巻きの大量廃棄の映像が放送されたので、記憶に新しい方も多いかと思いますが、実際に当社の現場を見ると、まだ食べられるのに捨てられているというものよりも、商品にならないもの、例えば魚のあら、トリミングした後に出る葉くずなどが廃棄物のほとんどを占めている状況です。
商品を手に取ってもらわないと、やはり食品ロスになってしまうので味はもちろん、見た目も美味しい商品づくりに注力しています。研修や、動画による商品作りの確認などを通じて、誰もが一定レベル以上の商品製造ができるように教育しています。
ちなみに皆さんの関心が高いであろう、恵方巻きのロスについては、今年は当社で0.1%の廃棄率でした。当社では店内で恵方巻きを一本一本製造していることもあり、こまめな製造調整などで、例年よりもより精度の高い製造を行うことができました。
全体の廃棄率の推移ですが、5年前に比べて0.2ポイント削減でき、額にして数億円単位の廃棄金額が削減できました。ここで出た利益を新たな商品開発や、既存の商品の磨き上げに使い、お客様に還元できるように努めています。
また、どうしても廃棄しなければならないものについてはリサイクルをしています。しかしながらリサイクルは、燃やす処理に比べてコストが2、3倍かかってしまいます。なので、最近では競合する同業他社と一緒に効率よく生ゴミを運搬してもらうことで、費用の低減を図っています。その結果、リサイクル率は今68.2%まで上昇し、業界の新たなリサイクル目標値となる60%を既に超えている状況です。
続いてワンウェイプラスチックの削減についてです。商品の容器包装を削減したり、プライベート商品の容器包装材の見直しを行ったりしています。
容器包装材にリサイクル材を使用した商品展開なども行なっています。最近では、国のプラスチック資源循環戦略にてバイオマスプラスチックの積極的な利用もうたわれていますので、3月に改装を行います、上越市の店舗からバイオマスプラの容器包装を導入し、7月から始まるレジ袋の有料化にあたっては、レジ袋の素材として導入することも検討して、お客様が自然と環境保全活動に参加できるような仕組みも考えています。また、使い終わったものも、もちろん回収してリサイクルをしています。
続いてCO2の削減についてです。当社は年間65,000トンものCO2を排出しています。その原因は24時間365日稼働している冷凍冷蔵設備による電気使用に伴うものであり、商品の品質を保持するために欠かすことができません。逆にこれを省エネすることによって大きな効果が期待できます。
具体的には、扉付きのケースの導入や、庫内容量を減らしたケース、ケース照明をLEDなどに変更して省エネを図っています。また最近では、温暖化係数の大きい代替フロンの漏えいも問題となっていますので、ノンフロン型のケース導入も進めています。このような取り組みの結果、店舗数はおかげさまで増加しているものの、エネルギー起源のCO2については、削減ができている状況です。
そのほか物流についても、エネルギーの削減に努めて、なるべく荷台を空にしてトラックを走らせないという工夫をしています。具体的には、店舗に商品を届けた後、その店の近くの食品工場に立ち寄って商品を積んで、また当社の物流センターに戻ってきます。そうすることで食品工場が当社向けのトラックを手配する必要がなくなり、物流全体でもエネルギーの削減ができています。
(3)目標達成までの壁
このように今、色々な課題に取り組んでいますが、取り組みを進める上で壁も感じています。例えば当社では、もっと多くのプラスチック容器を回収してリサイクルしたいと思っているのですが、技術があまりなくて採算の合うルートがなかったり、環境に配慮していても商品価格にそれが転嫁されたりしてしまうと支持されにくく、結果として取り組みが停滞して事業として継続できないなど、私たちの力だけでは解決できない状況にあります。
私たちはスーパーマーケットなので、商品の販売についてはプロフェッショナルですが、リサイクル分野など弱いところについては、逆にそれを強みとしている企業・団体と手を取り合って取り組みを進めていきたいと感じています。このSDGsを通して今まで接点の少なかった業界の皆さんとも協力できて、お互いの目標が達成できるような取り組みができるといいなと考えています。
(4)本日お越しの皆様に
ぜひ、今回これだけ多くの皆さんとお会いすることができましたので、ぜひ当社の弱みを強みとしている企業・団体や、逆に当社の強みで何か協力できる企業・団体がありましたら協働して、新潟からさらにSDGsの取り組みが発展し、世界がよりよくなる一助になればいいなと思っています。皆様のご連絡をお待ちしております。
問い合わせ先 原信ナルスオペレーションサービス TQMCSR部環境CSR室
電話:0258-66-8650
(2020/2/18 にいがたSDGsフォーラム2020 新潟市中央区)
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